環境ホルモン
新聞やニュースでも話題となっている環境ホルモン。体にとって社会全体にとってよくないものとして認知されていますが、実際に皆さんは環境ホルモンのどこまでをご存じでしょうか。
今回は環境ホルモンにお詳しい(株)ジザニア・ジャパン様に環境ホルモンについてのレポートをお願いいたしました。
1.環境ホルモンとは
生物が本来もっているホルモンは、絶妙のタイミングで分泌がコントロールされ、体内における様々な働きを支えています。必要なときに必要だけ分泌されているわけです。
そこに介入し、本来のデリケートなバランスを混乱させ、生殖異常を引き起こすのが
環境ホルモンの悪性です。
環境ホルモン、天然ホルモン、いずれのホルモンにもそれが作用して影響を与える標的器官というものがあります。標的器官をコントロールして、機能を調節しているわけです。
特定の標的器官に働き、影響を与えるホルモンは、わかりやすくいうと、体内で情報伝達の役割を担っているといえます。
ところが、体内の異物である環境ホルモンは、この標的器官に偽の情報を流して、その結果、混乱させるのではないかと考えられています。これが「内分泌攪乱(かくらん)物質」といわれる理由です。
ところで、ホルモンが標的器官へ情報を流す場合、標的器官には鍵穴ともいうべきレセプター(受容体)が存在します。この鍵穴に結合する際、ホルモンはものすごく微量で充分なのです。(図1.天然ホルモンと環境ホルモンの違い)これは非常に重要な事です。
胎児期や成長段階にある幼児期には、ホルモンに対して非常に敏感なので、ごく微量の環境ホルモンが偽情報を流すだけでも、標的器官は簡単にだまされてしまうのです。
環境ホルモンが毒性を発揮する「微量」がどれくらいかというと、これまでの細胞毒性や遺伝毒性を検討していたレベルの1万分の1、百万分の1の濃度でも影響を与えてしまうほどです。
専門的にいうと、pptのレベルです。ちなみにpptは濃度を表す単位で、1pptは1キログラム中に1兆分の1グラム含まれているということです。
これがどんなに微量かというと「プールに目薬1滴垂らしたぐらい」と考えてください。
2.環境ホルモンの発生源

大気から
呼吸した時に体内に入ってくる可能性のもっとも高い環境ホルモンはダイオキシン類である。それらの大部分はゴミ焼却炉の煙突から排出される。家庭や工場からの廃棄物の焼却時に発生するダイオキシンの量は、わが国で年間約5キログラムといわれている。それ以外の発生源からもダイキシン類は生成しているが、最も多いのは都市ゴミのような一般廃棄物の焼却である。
水から
野生生物は水を飲む時にプランクトンや小魚も同時に飲み込む。それに対し、私たちは通常、ペットボトルか上水道の水しか飲料水としない。わが国の水道水は、全て公立浄水場で浄化され、水質検査を受けたものである。しかし、ごく微量はいってくるかもしれない環境ホルモンは検査されていない。
浄水場では、まず、流入水中の粒子を凝縮させてから沈殿地において沈殿させ、沈澱地からの水を砂と砂利の層を通して濾過している。ダイオキシンのような疎水性物質は、微粒子に吸着しているために沈澱しやすく、さらに濾過層に捕捉されてしまうであろう。わが国の水からのダイオキシン類の1日摂取量は0.001pg/kg体重程度と考えられる。
水に関して心配なのはヒトよりも、むしろ、水生生物に対しての影響である。自然界ではヒトと生物が共生している。ヒトだけが特別ではない。野生生物が環境ホルモンに汚染されると、それがヒトにはね返ってくるのである。
食品から
食品が新鮮だからといって、必ずしも安心できない。もし、果物や野菜が輸入品で、それらに環境ホルモンの農薬が付着していればどうなるであろうか。洗剤で十分洗うといっても、それで環境ホルモンがまったく付着していないと断言できるだろうか。
食品の中でもっとも心配なのが魚肉である。もしも、海底中の環境ホルモンをプランクトンが食べ、次にそのプランクトンを小魚が食べ、続いてそれをさらに大きな魚が食べ、その魚を次にヒトが食べると、環境ホルモンはプランクトンからそのヒトの体内に移っていく。このように、食物が次々と生物間を移動していくことを食物連鎖という。食物連鎖によって生じる大問題は、環境ホルモンがあとの生物にいくほど強く体内に濃縮される。つまり、生物濃縮が起こることである。
環境ホルモンの生物濃縮倍率は生物や場所によっても異なる。食物が体外へすばやく排泄されたり、体内で速やかに分解されると、生物濃縮倍率は大きく低下する。海洋哺乳動物には分厚い皮下脂肪があるため、脂溶性物質の蓄積がそれだけ高くなる。
このような生物濃縮が起こると、魚をよく食べる日本人の体内にはじわじわと環境ホルモンが蓄積されていくようで心配になる。環境庁が日本の河川、湖、海などで定期的に測定している結果によると、わが国の魚の環境ホルモン含量は少しずつではあるが低下している。問題は、わが環境庁の管轄以外の水域からの魚である。
母乳から
母乳にダイオキシン類が牛乳中の約30倍も多く含まれているのは、母親の脂肪組織内に蓄積されていたダイオキシン類が、乳腺細胞での母乳の生合成の際に約10倍に濃縮されて母乳脂肪層に取り込まれていったためである。その結果、母親中のダイオキシン類の半分近くが乳児に移っていくことになる。
参考文献 環境ホルモン 講談社
3.環境ホルモンによる影響(具体的な事例)
1960年代から1970年代にかけて切迫流産を予防するために、ジエスチルスチルベステロール(DES)という女性ホルモンが広く使われました。効果は抜群で、切迫流産を防ぎ、多数の母親が無事に子供を出産することができました。ところが、とんでもないところから副作用が出たのです。DESは天然の女性ホルモンに匹敵する強力な合成ホルモンです。英国で合成に成功し、米国食品医薬局(FDA)も認可しました。認可後、アメリカでは延べ500万〜600万人にこのDESが投与されました。そして、その産まれてきた子どもたちに影響が出たのです。DESを投与された女性から産まれた子供が性的に成熟する時期に、女性のガンとしては非常に珍しい膣ガンにかかる例が頻発しました。
膣ガンは普通、50歳以上の女性がかかりやすいガンで、女性生殖器のガンのなかでは1〜2パーセントしか見られないものです。それが20歳前後の若い女性に多発したのです。調査の結果、膣ガンの発生とDESとの因果関係がはっきりして、1971年に妊婦への使用が禁止されています。また、子供が男子の場合には精子の数が少なくなったという報告がなされています・この1件はヒトも化学物質やホルモン様物質の影響で生殖器のガンになったり、精子数がへったりするという確たる実例になりました。
参考文献 環境ホルモン入門 KKベストセラーズ
4.野生生物への影響 疑われる野生生物への影響と原因物質(環境庁資料より)
- ●ワニ (米国)
- フロリダ州アポプカ湖のワニは、ふ化数が減少した。生態のオスもペニスが小さく生殖不能な例が多い。湖に流入したDDTなどの有機塩素農薬が原因らしい。
- ●コイ (日本)
- 横浜市大の井口泰泉教授らの調査で、オスのコイ38匹中、11匹の精巣が小さかった。
水質分析で洗剤などに使われる界面活性剤のノニルフェノールが見つかった。 - ●カモメ (米国)
- 米国の五大湖で、メスとメスで子育てするなどの異常行動が見られた。甲状腺の異常も目立つ。DDTやある種のPCBなどの影響と考える。
- ●アザラシ (オランダ)
- オランダのワーデン海でゼニガタアザラシ急減した。生殖能力の低下、免疫機能も低下して感染症にかかりやすくなった。PCBなどが疑われる
- ●イボニシ (日本)
- 国立環境研の堀口敏宏さんの調査で、日本沿岸の94ヶ所でメスのイボニシにペニスができていた。貝の付着を防ぐための船底塗料(有機スズ化合物)が原因
- ●ニジマス (英国)
- オスの精巣が小さく、メス化が進み、数も減少した。汚水処理場からの放出水に含まれる界面活性剤のノニルフェノールが原因と疑われる
5.では、個人でできる環境ホルモン対策とはどういったものがあるのでしょうか
個人でできる環境ホルモン対策としては大まかに分けると3種類の方法が考えられます。
(1)体内にたまっている環境ホルモンを積極的に排出させる。
−ダイオキシン類を吸収する食物繊維が多い野菜を摂る。
−葉緑素(クロロフィル)を多く含む緑黄色野菜も効果が期待できる。
−環境ホルモンを除去出来るような物質を含有している健康食品を摂る。
(食物繊維・ステビア・クロレラ・炭等)
(2)生活の中で環境ホルモンが含まれる物質をできるだけ取り入れないよう心がける。
−野菜はよく洗い、外側の葉(皮)は避ける。
※ダイオキシン類は大気を経由して野菜の葉に付着したり、
土壌にも含まれていることがある。
−有機野菜や無農薬野菜を食べる。輸入農産物や輸入食品の農薬に気を配る。
−魚介類は脂肪と内臓を避ける。
ダイオキシン類やPCBが蓄積しやすい脂肪分の多い食事は避ける。
−環境ホルモン物質が缶やプラスチック容器から食品に移らないように注意する。
ビスフェノールAを溶出しにくい缶もある。
−食品の保存はガラスや陶磁器で。電子レンジでプラスチック容器やラップフィルム
を温めるのは避ける。(とくに中身が油ものの場合)
(3)環境ホルモンが作られない環境づくりに一人一人が取り組んでいく。
−ゴミを減らし、出す場合にも分別は徹底する。過剰包装も断る。
再生品を買ったり、リサイクルしやすい環境配慮型の商品を買う。
※エコマークや再生紙使用マークが目印
参考文献 環境ホルモンのしくみ 日本実業出版書
脱・環境ホルモン 酵素食品
